いまや、スポーツ界のトップカテゴリーでは常識になりつつあるデータ活用ですが、育成年代で導入しているチームは日本全国を見渡しても、ほとんどありません。
そこには、コスト面の課題はもちろん、データを活用できる人材がいない、データを分析する時間が取れないなどの課題が横たわっていました。
そこで、ファルカオFC久喜では、当クラブでアドバイザーを務めるスポーツライター・瀬川泰祐氏の協力のもと、来年度からの本格導入を目指し、2020年8月1日より、本田圭佑選手が手がける最先端のウェアラブルデバイス「Knows(ノウズ)」を試験導入することにしました。
2016年の設立当時から当クラブを裏側から支えてきた瀬川氏は、これまでスポーツ界のさまざまなプロジェクトに参加してきた経験をもち、現在も「スポーツテック東京」をはじめとするプロジェクトに参加中と、スポーツビジネス・スポーツテクノロジー、スポーツアナリティクスといった分野に精通した人材です。
今回の「Knows」の導入にあたっては、瀬川氏を中心にクラブ内でプロジェクトチームを組み、育成年代のデータ活用について、徹底的に議論を重ねました。これをきっかけに、育成年代の指導における様々な課題を解決し、地域のスポーツに新たな風を吹かせていければと考えております。
プレイヤーとしての成長、そして人間力を育む後押しをするデータ活用
ここでは、「私たちは、なぜ、いまウェアラブルデバイス「Knows」を導入することにしたのか?」を説明させていただきたいと思います。
これまで私たちは、地域スポーツの現状に対して、大きな課題を感じてきました。
根拠のない選手への評価、感情をコントロールできない大人たちの暴言・暴力。そして大人に怯え自分を表現できない選手たち……。
2016年に私たちがファルカオフットボールクラブを立ち上げたのも、そんな地域のスポーツ環境を少しでも良くしていきたいという思いがあったからです。
地域のみなさまのご協力のおかげで、当クラブはようやく5年目を迎えることができましたが、小中学年代を一貫した育成方針で指導を行い、ユース年代につなげるために、クラブの指導メソッドを策定しました。
指導メソッドを策定する過程で、どうしても解決できなかったのが、客観的な基準をどこに設けるかということでした。サッカーは、様々な選択肢の中から常に一つだけを決断しなければならない難しいスポーツです。誰がみても明らかな事実だけで成り立っているわけではないため、客観的な事実に基づいた指導を行うのが、とても難しいという課題を常に抱えています。
もちろん、指導者たちの経験に基づいた「感覚」とそこから生まれる「気づき」は非常に大切なものですが、その「感覚」だけを頼りにして指導すると、コーチによって言っていることがバラバラだったり、選手たちの感覚とのズレが生じてしまいます。すると選手たちは「納得できない」し、指導されたことの意味を考えるよりも、不満が先に出てしまい、成長の阻害要因にもなり得るのです。
そのような時に、データによる客観的な事実があれば、指導者と選手たちは共通の基準を元に会話することができます。そして何より、選手たちが納得し、どうしたら課題を改善するのかを考え出すでしょう。つまり選手個々の自立した成長を促すことができるようになるのです。
今回導入した「Knows」は、日本サッカー界の最高峰であるJ1クラブのトップチームでも採用されていますが、高校サッカーやJリーグ下部組織など、育成カテゴリーの強豪チームでもすでに多数の導入実績があり、育成を重視したデータ分析が可能なことに大きな特徴があります。
選手の成長過程に差がある育成年代では、チーム全体で勝利を目指すことと同じくらい大切なのが選手個人の成長です。それは、身体的な成長や技術的な成長だけではなく、人間的な成長も含みます。
これまで、早熟な選手とそうではない選手を画一的に評価して指導してしまうという現実は、常に私たち育成現場での大きな課題でした。きっと身体的成長が遅いが故に、歯がゆい思いをしてきた選手や保護者の方も多いことでしょう。また、早期に身体的に成長した選手が、才能があると勘違いをして、努力を怠ってしまい、その後の成長が止まってしまったというケースも何度もみてきました。
このような選手たちの成長の阻害要因を極力排除し、選手個々の成長段階に応じた指導ができれば、誰一人取りこぼさないチーム作りが可能になります。私たちは、Knowsの導入をきっかけに、選手たちの成長段階に応じた指導の軸を作っていきたいと考えています。
いまの自分に満足せず、選手個々が真剣にサッカーに取り組む。そんな育成年代ならではの指導を目指していきます。
Knowsの導入について
2020年度は、試験導入を考えており、希望者のみの導入を予定しております。
後日説明会を開催させていただきますので、説明会の開催日程は、別途ご案内いたします。
なお対象は、ジュニアユースに所属する選手とさせていただきます。